かぎろひNOW
悠久の奈良大和路を一歩ずつ 風景、もの、人…との出会いを楽しみながら
赤膚焼 正史窯に寄せて

大塩窯の8代大塩正人(おおしおまさんど)氏の三男さんだとお聞きした。
ワタクシ、ずうっと前に、先代(7代)の大塩正人氏に2度、取材させていただいたことなどを一気に思い出して、昔の雑誌を引っ張り出してみた。

これは旧刊の「かぎろいの大和路」28号。
7代大塩正人氏はすでにお亡くなりになっているが、このとき76歳。
昭和59年のことだ。今から26年前になる!
それから7年後、東京の小冊子から頼まれて再び、お伺いすることになった。

ワタクシもまだ若く、大家を前にドキドキしどおしだったことを覚えている。
年齢を重ねてもなお、厳しさや気むずかしさみたいなものが感じられて、ワタクシはその風格に圧倒されていた。
カメラを向けても手が震えるほど。
偉い先生に何度も撮影をお願いするわけにはいかないので、とても気を遣うところなのだ。
今のようなデジタルではないので(その場で確認できず)、失敗でもしたらえらいことになる。
緊張感が最大になってシャッターを押す。
とそのとき、正人先生が一言「光ってなかったよ」。
どうやら緊張のあまり、フラッシュがうまく作動しなかったものとみえる。
す、すみません、もう一度、お願いします

フラッシュが光っていないことに私は気づいていなかったので、そのまま終わっていたらおそらく写真は失敗していたはず。
それを助けていただいたのと、その場の雰囲気が急にやわらかくなって、私はこの大家に親近感みたいなものを抱くことになった。
緊張してお話を聞いていたときとは全く違う空気が流れて、それからのほうがいろいろなことを聞けたような気がする。
そして、最後に、先生は
「そこにあるのから好きなものを持っていき」と、先生の作品が並んでいる棚を指されたのだ。
ええっ、まさか、そんな。
いくらなんでも、人間国宝になろうかというほどの大家の品をいただくわけにはいかないでしょ。
何も言えずタジタジしていると、
先生自らが棚の所へ行かれて、「これがいいかな」と渡してくださったのだ。

こうして横から見てみると、曲線の美しさがたまらない。
しかも、唇にあてると、とてもやさしい。
まさに、用の美。
今夜は、久しぶりにこのぐいのみを使ってみよう。
※赤膚焼 正史窯(大塩正史)
奈良市下三条町2-1
なら青丹彩地下1階
TEL/FAX0742-23-8000
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コメント
バロックおじさん
おはようございます。
一夜明けて、大丈夫ですか。
くしゃみは、噂のせいだったらいいのですが…
URL | かぎろひ #79D/WHSg | 2010/12/04 07:20 | edit
バロックおじさん
こんばんは
コメントありがとうございます。
いやぁ、ビックリ。聞こえました?
昨日、バロックおじさんのお噂をしていたんですよ。
ならまちのN旅館さんで。
ここに顔を出すといつも、バロックおじさんの話題になります。
久しぶりに、おかみさんとしばらくおしゃべりを楽しんできました。
と考えますと、バロックおじさんとも不思議なご縁ですよね。
身に余るお言葉、ちょっと恥ずかしく恐縮しております。
URL | かぎろひ #79D/WHSg | 2010/12/03 21:58 | edit
こんばんは。またご無沙汰してしまいました。
旧かぎろひの大塩正人さんの記事、覚えています。
初めて「かぎろひ」を手にした時、紙面が丁寧に作られていると
感じて速攻で数冊買ったものでした。
後の世に残る仕事、良いですね。かぎろひさんにも同じものを
感じています。
そろそろ16日、執金剛神の御開帳ですね。
また会いに行きたいです。
白雪さん
こんにちは。
いろいろとありがとうございます。
日常使いたいのですが、私はそそっかし屋なものですから、万が一を考えるとなかなか…^^;
ほかにもあるんですよ。とっておきのいいものが。
ハレの日には出番がきます。
でも、もうそろそろいいものはいつも使っていきたいなという心境(年齢)になりましたよ。後悔のないように人生を楽しみたいと思いま~す。
URL | かぎろひ #79D/WHSg | 2010/12/03 16:23 | edit
使ってあげてください、私も言われました。
河合久(寛次郎さんの甥っ子で弟子)のをいただいたときに、家宝にし飾っておきますと言った時に、「使って何ぼです、どんどん使ってください。その方が作り手は喜びます」と。
URL | 白雪 #79D/WHSg | 2010/12/03 13:04 | edit
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