かぎろひNOW
悠久の奈良大和路を一歩ずつ 風景、もの、人…との出会いを楽しみながら
国津神社の秋祭 宵宮② 宮座神事
国津神社の場合は、左座と右座の2つ。左座は主分講(しゅぶんこう)、右座は敬神講(けいしんこう)と言う。前者は神道に関わる座、後者は寺院に関係しており、仏(ぶつ)と呼ばれていた。
両座とも約20軒で構成。2座は別々の組織で、普段はそれぞれに動いているが、秋祭は両座の十人衆が拝殿に集う。

神様からみて左側(拝殿向かって右側)に左座(主分講)の十人衆、反対側に右座(敬神講)の十人衆が座る。神官さんや巫女さんが座る位置は毎年、左座と右座を交代。今年は右座にお座りだった。
十人衆というのは、年長者の10人を指す。最年長者が一老で、年齢順に二老、三老…と続く。
秋祭宵宮の10月8日、神事は5時30分から始まったのだが、早い時間から、それぞれの当家(とうや)さんが荷物を持って来られ準備を始めていた。
当家さんは、お世話役のような係で、毎年順番に交代していく。
↓前年に撮った写真を見ながら神饌の準備などを進めていらっしゃったのは、敬神講の当家、中森さん。4老の息子さんとか。

拝殿には女性は上れないことになっている。
息子さんがいらっしゃる場合はいいのだが、主分講の当家、中田さんは娘さんばかり。奥様と娘さんは外で準備を進め、拝殿では、7老さん自らが作業をされていた。↓

そうそう、ワタクシも一応女性なので、お祭りを仕切る責任者の方から申し訳なさそうに「拝殿に上って取材はしていただけないのです」と言われていた。もちろん、女性でなくても、拝殿に上がらせてもらうつもりなど、毛頭なかったのだが。
夕刻になると、十人衆の皆様が集まってこられた。
「あっ!」
「おっ! 取材にきてくれたんか、そうかそうか」と声をかけてくださったのは、奈良県三輪素麺工業協働組合の前理事長、植田さん。ワタクシ、ずいぶん前から存じ上げていて、いろいろお世話になった方。なんと、主分講の1老さんだった。
1老さんは、十人衆の中でもいちばんエライ方で、1老の声で一連の神事が執り行われていく、まあ神様に次ぐ存在と言っていいのカナ。
そこへいらっしゃったのが、このほど初めて十人衆入りしたとおっしゃる的場さん。十老さん、さすがにお若い。
↓あ、1老さんと10老さん、ツーショットの写真を撮らせてください。ブログに載せていいですか。
旧知の間柄という親しさもあって矢継ぎ早に承諾を得る^^;

昔は、紋付きの羽織袴姿で参集したとか。
主分講の当家さんに、ご苦労などをお聞きした。
直会(なおらい)は仕出し料理でとなり、昔ほどの大変さはなくなったとはいえ、ずいぶん神経を使われたようだった。
↓たとえば、必ず用意しなければいけない枝豆。
この日のために何度も植えたが、タイミングよくいかなかったとか。結局、ネットで取り寄せたのだという。
ちぎり豆1人宛10~15さやと、右は枝つき3本。

枝付きは、大きな釜で、うまく茹で上げるのが大変だったとおっしゃっていた。
この3本の枝豆は「当家渡し」(当家引き継ぎの行事)に必要なもので、1老、次の当家、今の当家の分という意味があるそうだ。
拝殿に、両座の十人衆が着座すると、宵宮祭が始まる。神官による祝詞奏上、巫女による神楽舞奉納、全員での大祓詞の唱和などが行われていた。
暗くなるにつれて、次々と家族連れなどがお参りにくる。
そのたびに巫女さんが鈴でお祓いをする。

その間、十人衆はお茶を飲みながら歓談。
ワタクシが外から写真を撮ったりしていると、奥に座っていらっしゃる1老さんが、なんと手招きしているではないの。どうも、上がっておいで、とかおっしゃっている、ようなのだ。
ま、まさか。
ワタクシは、ダメダメですよ、という身振りを返しつつ、あ~、とんでもないことやわと、一旦は身を隠す。
しばらくして、そおっと、拝殿のほうをのぞくと、今度は大きな声で「ここへ上がって来!」。
まいったなぁ。こう見えても一応女性ですよ、そんなことできるわけないっしょ

ひえっ。
それでも、女性はダメだという掟に背いてばちが当たってもヤだしね。ねえ。
困って当家さん母娘に助けを求めると「私らはダメですけど、報道ということでいいんじゃないですか」
他の十人衆の方も「女はアカン言うても、巫女さんもいてはるし、大丈夫、大丈夫」
思いがけない展開になって、もうここまできたら、逃げることができなくなってしまった。
が、1人でも反対の方がいらっしゃったらやめようと、皆さんのお顔を見て「上がらせていただいてもよろしいですか」
皆さんニコニコしてうなずいてくださったので、よしっ、失礼しまーす。
結果的には、上がらせてもらったのはとても貴重な機会で、拝殿から見る景色は外から見ているのとはずいぶん違っていた。
↓左座エリアから右座をのぞむ。目の当たりに、巫女さん。

↓拝殿の天井に吊ってある提灯は、十人衆がこの日持ってきたもの。各自、自分の提灯を持っているのだ。

このたび十人衆入りすることが決まったばかりの的場さんは「提灯をつくる間もなくて…」
↓神饌。「撮っていいですか」。外からでは奥のほうがわからなかったのだ。

皆さんの写真も撮らせていただく。
↓1老の植田一隆さん、2老の的場一起さん、3老の、過日いろいろ教えていただいた的場好之さん

お参りの人が途絶えた8時頃、巫女さんは役目を終えて帰られ、それから直会が始まる。
すっかり遅くなりそうだったので、直会が始まる前に、ワタクシも失礼することに。
「1老さんの家に泊めてもらったらええやないの」という声も聞こえていたりして…^^;
人情の厚さを感じた1日。
昼間とちがって夜風は冷たかったけれど、心にポッと温かいものを感じながら暗い道を急いだのだった。
※国津神社に関する当ブログ記事→2つの国津神社 秋祭宵宮祭①
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コメント
たーちゃんさん
こんばんは
いつもありがとうございます。
エソという魚はあまり一般的ではないような気がするのですが。なんでエソなんでしょうね。
今度いつになるかわかりませんが、桜井市の特集のときにぜひお願いしたいと思います。
お住まいは三輪よりもう少し南のほうかなあと想像しているのですが。
桜井は魅力的な地域がいっぱいですからね、楽しみです。
URL | かぎろひ #79D/WHSg | 2011/10/19 21:42 | edit
こんばんわ
母親に聞くと昔は大和地方では秋祭りに特に百姓さんが食べていたとの
理由ははっきりしませんが旬で油がのっておいしいかららしいです。
私自身は子供の頃から細かい骨がありほとんど食べませんでした。
もう少し情報を収集しておきます。
取材の件 本当なら喜んで協力させていただきます。
私自身の情報は余りありませんが!
連絡方法をお願いします。
リンネさん
こんにちは
ありがとうございます。
神饌の奥、栗です。
人の味ですか! ザクロは聞きますが、栗もですか!!
ザクロはありませんでした。ホッ^^;
国津神社は、ホケノ山の脇、巻向川沿い、箸墓と三輪山を結ぶライン上…などなど、興味が尽きません。
集落にお住みの皆様も、なにか風格をお持ちのような感じがしました。
後日譚があるのですが、書こうかどうしようか迷っています。
URL | かぎろひ #79D/WHSg | 2011/10/19 14:35 | edit
こんにちは
興味深く拝読しました。
神饌の写真の奥に写っているのは栗ですか?
昔神社では栗、ザクロなどを神饌にして人の味がすると言って御供えしたと神職に聞いたことがあります。
人身御供をした伝承の神社もあります。
ふと、国津神社の側の巻向川が氾濫してヤマタノオロチ伝説を想像してしまいました。
URL | リンネ #79D/WHSg | 2011/10/19 13:00 | edit
たーちゃんさん
おはようございます。
たーちゃんのお近くの神社にも、宮座の組織があるのではないでしょうか。
戸数が少ない所もあったりしますので、一般にはわからないことも。
国津神社の場合も、8月に取材させていただいたときに知りました。
こっちが面白そうなので(といっては失礼ですが)、記事を差し替えることにしました。書き直しです^^;
たーちゃんさんの地域の、お祭りにエソを食べる風習。興味深く拝聴しました。今度、取材させてください!
URL | かぎろひ #79D/WHSg | 2011/10/19 08:39 | edit
円亀山人さん
おはようございます。
お若い神職さんは新しい視点で、神社を盛り上げていらっしゃるのですね。
以前、お聞きした方の息子さんなんですね。
立派にお父様の跡を継がれているようで、しみじみした気持ちになりました。
巫女さん、こんなことを言っては失礼かもしれませんが、とても初々しくかわいらしい方でした。
円亀さんが撮られた巫女さんの写真もぜひ!
URL | かぎろひ #79D/WHSg | 2011/10/19 08:32 | edit
こんばんは!
恥ずかしながら宮坐を初めて知りました。
近くでこのような神聖な儀式が行われているのを誇りに思わなければいけま
せんね!!
どこでも直ぐに現場の雰囲気に溶け込めるとは羨ましいです。
秋祭りに鯛の件ですが我が家ではエソと言う魚を食べる風習があります。
桜井では昔から続いていますが最近ではお年寄りのおられる一部の家でし
か食べられていませんが!!
「(マジメに受けて)巫女さんはやはり未婚の若い方じゃないとアカンと
思います。残念ですが、化けられません。」(笑)
「未婚の若い方」どころか、言うなればまだ「少女」という名の女性で
なければいけないのです。若いだけではケガレの疑いが濃厚ゆえ?
実はわたくしめの奥方の姉の嫁ぎ先の神社での秋祭り、15日、16日
でした。孫の代になった神職は、さすが若者。「お神楽隊」を新規に
編成し、他の神社の嫉妬を浴びているとか。さしずめ、1老か2老ばか
りの当家なのかも。神職も似たりよったりの年齢の様子。
あっ、わたくしめが昔撮ったかわいい巫女さん二人の写真、どこへ
行ったのだろう。探してBBSに載せたいなぁ~!
URL | 円亀山人 #79D/WHSg | 2011/10/18 21:46 | edit
らん♪ちゃん
こんばんは!
秋祭りには枝豆という所が多いように思います。
豊作の象徴?
以前、五條で取材したお祭りの直会は、山盛りの枝豆だけでした。
伝統の神事であるだけに、女性禁制のしきたりにはやはり真面目に気を遣いますよ。
以前、やはり女性厳禁でやってきた宮座の神事で、もう最後やから許すということで入らせていただいたことがあります。それでも険しいお顔の方もいらっしゃって緊張しましたよ。
結局、このお酒飲んだら許したる、と言われてコップ酒を飲み干した経験があります^^;
URL | かぎろひ #79D/WHSg | 2011/10/18 21:26 | edit
白雪ダーディーさん
こんばんは
あのう、(マジメに受けて)巫女さんはやはり未婚の若い方じゃないとアカンと思います。残念ですが、化けられません。
奈良はやはり神饌には鯛が多いですね。
一種の憧れ? いちばん上等のものを神様にお供えしようという心がこもっているのでしょうね。
宮座のお祭りはずいぶん簡略化されてきているようですが、受け継がれていくことでしょう。
URL | かぎろひ #79D/WHSg | 2011/10/18 21:17 | edit
こんばんわ!
楽しく拝読させていただきました(^-^)
枝豆ねぇ~~
なんで枝豆なのか、妙にお酒のアテとしか思えず
私にはウケました!
よかったですね~
女性禁制の場所にハイレルなんて
私だったら、ソソクサと上がらせてもらいます☆ミ
きっと、それだけ大事にされてる神事だからこそ
後世に伝えたかったんだろうなぁ~~なんて
ひとり合点して納得してしまいました。
ずっと残ってほしいですね。
それをi祈るばかりです。
楽しみにしていました続き、楽しく拝読させて頂きました。
提案ですが、これからは神社などの取材にはコスプレで行かれてはと思います。もちろん巫女さんの格好ですが・・・残念ながら・・制限があるのかしらん(師匠風に)
田舎の海のないところの神饌には鯛ではなく真鯉(黒鯉)の大きなのが生きたままよく使われていましたが奈良では見かけませんが。
少しづつ形を変えても受け継いでいってもらいたいものですね。
暗い夜道は気をつけてくださいよ。先日もマムシに噛まれた人が三室に運ばれていましたので。
URL | 白雪ダーディー #79D/WHSg | 2011/10/18 20:17 | edit
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