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かぎろひNOW

悠久の奈良大和路を一歩ずつ  風景、もの、人…との出会いを楽しみながら

辻邦生とモネ 

7月29日は「園生忌」。作家、辻邦生の命日である。没後24年。

毎年、命日と誕生日には辻さんに関することを書きたい。
さて、今年は何をと考えたとき、つい先日、「アサヒグループ大山崎山荘美術館」でモネの「睡蓮」を見たことが思い出された。⇒

辻邦生がクロード・モネについて書いたエッセーがある。

最初は、たぶん、これ。エッセー集『海辺の墓地から』に所収されている「クロード・モネの世界」「モネの言葉」。

230729海辺の墓地から

単行本は昭和49年(1974)の発行だが、初出は昭和39年(1964)「みすず現代美術第22巻『モネ』」(みすず書房)


続いて、昭和55年(1980)に発行された、辻邦生芸術論集『橄欖の小枝』のトップに、「モネの見たもの」が載る。

230729橄欖の小枝

Ⅰ、Ⅱに分かれていて、Iは、上記の『海辺の墓地から』にある「クロード・モネの世界」と同じものだが、「モネの言葉」はない。
Ⅱの初出は昭和47年(1972)、中央公論社刊「世界の名画」6

『橄欖の小枝』には、モネの図版が6枚もとられていて、力が入っているのがわかる。

230729日を浴びるポプラ並木
↑日を浴びるポプラ並木(国立西洋美術館)


230729睡蓮


その後、昭和59年(1984)に出た『時の果実』にも

230729時の果実

「クロード・モネの世界」が載るが、最初のエッセーと同じものである。ただ、ここにも「モネの言葉」はない。


平成5年(1993)発行のエッセー集『美神との饗宴の森で』には、

230729美神との饗宴の森で

モネに関する新しい文章が登場。題して「見えるもの見えないもの」「永遠の影を見る瞬間」。

文章のなかで、辻さんは、モネの有名な「ひなげし」に触れて、作家ミッシェル・ビュトールの指摘を紹介している。

五月の晴れた午後、赤くひなげしの咲く小高い丘に、黒リボン付きの黄色い帽子をかぶった夫人が、麦わら帽の少年と並んで立つ。

よく見ると、中景の左に、同じような夫人と少年が見える。

この二組の婦人と少年が、実は、同一の人物である、と指摘したのは、小説家のミッシェル・ビュトールだ。彼によると、前景の婦人と少年は、丘の上の婦人と少年が、ひなげしの花の中を歩き、丘の下に着いたところだという。その証拠に、前景の少年の腕には摘まれた赤い花が抱えられている。
なぜモネが同じ夫人と少年を、丘の上と下に描いたか。ビュトールは、この二人がぶらぶら丘を下ってくる「時間の経過を」表現するためだ、と説明する。

230729ひなげし

「時間の経過」そのものを正面から描いたのはモネが最初だろう。
ビュトールによると、モネは、見えない水面を描くのに熱中したように、見えない風、音響なども描いた。『パラソルを持つ婦人』では、夫人のスカーフがひらひら後になびいている。ここではパラソルに当る太陽とともに、風を描こうとしている。『ベル・イールの岩』では、岩に砕ける波のごうごういう響き。…印象派のモネに一歩踏み込んだ面白い解釈だ。


「ひなげし」は集英社『現代世界美術全集』2から。夫がずいぶん前に入手したもの。

230729美術全集

先日、美術好きの上の娘が来たとき、「タツオクンが死んだら、これ頂戴」と言って帰った。娘にはかなわんなあ。誰もが死ぬとはわかっていても平気で口にされるとドキリ(笑)。はいはい、どうぞ。

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Posted on 2023/07/29 Sat. 12:24 [edit]

category: 辻邦生

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