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かぎろひNOW

悠久の奈良大和路を一歩ずつ  風景、もの、人…との出会いを楽しみながら

長距離走者の孤独 

アラン・シリトー著『長距離走者の孤独』。
20代の頃、いたく感じるところがあった本のうちの一冊だ。奈良へ来る前の話。

先日、夫としゃべっているうちに、何からどうなったのかは思い出せないが、この本にいきついた。
夫も若い頃、感銘を受けたのだという。

えーっ、出会って40年、初めて聞く話。共通点があったとは(笑)

なぜか、2人とも今は手元にないのも一緒^^;

もう一度、読みたくなって注文した。

51JDTQK14FL.jpg

金庫を盗んで捕まり、感化院に入ることになった17歳の少年、スミスの独白のかたちで話は進む。

感化院では体力と脚力をかわれて、長距離走の選手に選ばれる。毎朝のトレーニングを重ね、スミス自身も走ることが好きになり、めきめきと才能をのばす。
いっぽう感化院長にとっては、わが施設から優勝者を出すことは、若者の更生に尽力しているという名誉につながる。

スミスはお見通しだ。

大会当日、スミスはぶっちりぎりの速さで2位以下を大きく引き離し、優勝は間違いないと誰もが信じて疑わなかった。
が、ゴール手前でスミスは走ることをやめる。後ろから遅れて走ってくる選手に優勝をゆずり、自らは2位に甘んじる。
偽善的な感化院長や権威への反抗だった。


ええーっ。
思い描いていたラストとは違うことに少なからずのショック。
もちろん、権威や偽善に対する反抗心についての思いは変わらないのだが、2位でゴールしたのだったとは…

ワタクシがずっと心の中にイメージとして残っていたのは、ゴールを目前にして、逆走する少年の姿なのだ。

それがワタクシだけの印象なら、単なる思いこみで済むのだが、なんと、夫もゴールから逆走するイメージをもっていたというではないか。

もう一度、小説を確認してみる。

河野一郎 訳

今や観覧席では紳士淑女連中が叫び、立ち上がって、「走れ! 走れ!」ときざな声でわめいてやがる。だが、おれは、目も見えず耳も聞こえずまるで阿呆みたいにその場に立ったきりだ。…赤んぼみたいにおいおい泣きながら立ちつくしていた。とうとう奴らをやっつけたことで、嬉し泣きに泣けてきたのだ。

なぜなら、そのどよめきが聞こえ、ガンソープの連中が空中に上衣を放り上げているのが見え、おれのうしろでペタペタ聞こえていた足音がしだいに近づき、とつぜん汗の臭いと、息もたえだえのあえぎをつづけている両肺がおれのそばを通りすぎ、すっかりばてちまい、よたよた左右にふらつき、頭のおかしくなったズールー族みたいにぶつぶつ何やら口走り、おれが90歳ででっかい布張りの棺に足をつっこむようになるときの幽霊みたいな恰好で、あのロープめがけてふらふら走ってゆく姿が見えたからだ。おれ自身奴を声援してやりたいくらいだったー「さあ行け、さあ行け、早くとびこんじまえ。…」

だが奴はもうすでにゴールに達していた。そこでおれも奴のあとからとことこ走りだし、まだゴールの手前にあるときから耳ががあんとしはじめ、ゴールにつくなりへたへたと崩れてしまった。


2位でゴールしているのは間違いない。

次に、映画にもなったようだから、もしかしたら監督が脚色したのかも?

ではなく、原作に忠実なようだ。⇒

権力と威厳で屈従させる院長への反感は、レースが近づくにつれ、大きくなっていった。さて、レースの日。彼は案の定トップを独走している。院長は満足げに紳士、淑女を見渡す。ところが、期待を一身に集めた彼はゴール間近で、急にスピードを落し後のパブリック・スクールのライバルに優勝を譲った。これが霜のおりた凍てつく早朝にトレーニングをさせられた彼の淋しい孤独の勝利の小さな復讐であった

じゃあ、逆走のイメージはどこからきたん?
2位でゴールするのではなく、背を向けて逆に走っていく少年というイメージを勝手にふくらませていたというのか。2人とも?(笑)
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Posted on 2021/03/22 Mon. 11:33 [edit]

category: 読書

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