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かぎろひNOW

悠久の奈良大和路を一歩ずつ  風景、もの、人…との出会いを楽しみながら

ある生涯の七つの場所 

今日7月29日は、辻邦生さんの命日。亡くなって21年になる。
ということで、辻さんの著書から『ある生涯の七つの場所』という作品について記してみたい。

昭和49年(1974)から昭和63年(1988)まで15年間、文芸雑誌「海」に連載された。100の短編からなる。

ワタクシの持っているのは、単行本8冊。昭和50年『霧の聖マリ』から昭和63年『神々の愛でし海』まで、発行されるたびに買って読んでいた。

ある生涯単行本


え、初めて読んだのは45年も前になるの?^^;
大阪でいた独身の頃から、まさかの奈良へ来て、全巻完結の年は長女が2歳(笑)。ワタクシ自身にとっても、人生の大きな転換期だった10数年になる。

とはいえ、発行されたときに読んだままそれきりで、本棚に並んでいるだけだった。

もう一度読み直す気になったのは昨年、「かぎろひ歴史探訪」に初めて参加されたKさんの口から思いがけず『ある生涯の七つの場所』という題名を聞いたせい。
初めて参加してくださった方には参考までに「歴史探訪のことをどこで知ってくれましたか?」と聞くようにしている。
するとKさんは、辻邦生を検索して「かぎろひNOW」に行きついたとおっしゃったのだ。いやぁ、とても嬉しくてね。常連仲間のYさんも辻邦生つながりなので、やっぱりブログをやっていてよかったと思うのはこんな時だ。


『ある生涯の七つの場所』に収められた100の短編はそれぞれ独立した物語としても楽しめるが、いろいろな読み方ができる、辻邦生の野心作でもある。

著者の説明を借りよう。

この作品のタテのストーリーは赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の七つの色で分けられ、それぞれ「何色の場所からの挿話Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ……」として示されてゆきます。そしてその挿話の一つ一つは、それらの色を象徴的に帯びた背景ないし小道具が使用されております。たとえば「赤い場所からの挿話」では「赤い花」「赤い襷」「赤いネオン」「赤いドロップス」といったふうに。もちろん同色の挿話Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ……は、ある物語的な進行を示しますし、直接物語的な進行を持たない場合には、主人公の内的発展が辿られるはずです。
(「あとがき」より 1975.2)


2回目は色別に読んでみた。
ストーリーがつながって長編小説のような趣となる。特に「赤」と「橙」は5歳くらいから、少年、青年と成長していく、いわゆるビルドゥンクスロマン(教養小説と訳されるが、成長物語)風。

語り手はすべて「私」だが同一人物ではなく、実は4世代にわたる。場所も、日本だけではなく、アメリカ、ヨーロッパと展開するが、読み進めるうちに、なんとなくわかってくる。


しかし、これだけで終わっていないのに驚く。

この連作のもう一つの意図は、これらタテのストーリーに対してヨコのストーリーを書いてゆくということです。たとえば「黄色い場所からの挿話Ⅰ」と「赤い場所からの挿話Ⅰ」と「橙いろの場所からの挿話Ⅰ」というふうにⅠの挿話をまとめて読んでみると、そこに1人の別の人物の物語が示されることになるのです。これは同様にⅡ群の挿話シリーズ、Ⅲ群の挿話シリーズなどにおいても別個の主人公の運命が物語られることになっています。私はこのヨコのストーリーの中では14人の男女の運命を描いてゆくことを予定しています。
(同上「あとがき」より)


あまりにも壮大なので、整理するために表にしてみた。

ある生涯の七つの場所表
↑プロローグ、エピローグを入れて100になる。


なかなか一気には読めないのだけれど、長期間にわたるとかえって主人公とともに生きているような気になってくる。だいぶ前に出てきた懐かしい人に出会ったり、この事件はそういうことだったのかと謎が解けたり…。
いつしか、自分自身の人生を振り返ったり、両親や祖父母のことまで思い出してしまったりして。

そうして、ご縁のある知人友人が、奇跡的なつながりだということに気づく。
まだ知らないけれど、どこかでつながっている人に、そのうち会えるかもという期待がふくらんだり…^^;


辻邦生夫人はどう見ていたか。

ほぼ均等のサイズで積み重なり、連続する格子状の構造は、最小単位である一個の〈モデュール〉を基本として、平面から立面へと立ちあがる建築物に似ている。つねに全体の設計図を念頭に置いた上で、その都度、上と右に接触する既存の区画の内容を考慮しながら、新しい区画の短編を継ぎ足してゆくことになる。この狭く限定された区画の範囲内では、ときにはアド・リブに自在に筆を運ぶことも許される。こうして次つぎとあらたに小さな「物語の箱」を連結してゆく操作は、離れた糸目を拾いながら複雑な模様をしだいに浮き立たせてゆく編み物や機織りを連想させる。根気と忍耐を要する手仕事にも似たこの作品の完成までには、15年(1974から88まで)という長い歳月が流れた。しかし、「たえず書く」ことを生き甲斐にした人にとっては、むしろ楽しみのほうが大きかったに違いない。それぞれ異なるタイプの素敵な女性たちを創造し、一定の間隔を置きながら、しだいに実在感を増す彼女たちと再会したり、別れたりして、この期間をともに過ごしたからである。
(辻佐保子著『「たえず書く人」辻邦生と暮らして』より)


次は、Iだけを、Ⅱだけをというふうに読んでみるつもりだ。

ある生涯単行本2

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Posted on 2020/07/29 Wed. 13:19 [edit]

category: 辻邦生

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コメント

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 |  # | 2023/08/19 21:53 | edit

もう一度読んでみます 


変朴さん コメントありがとうございます。

ご指摘の点、全く気づいていませんでした。
この次はⅠ群、Ⅱ群…という読み方をしてみようと思っています。変朴さんへご連絡するすべがありませんので、また、ブログでご報告しますね。

URL | かぎろひ #QyAQ.u3g | 2023/08/12 16:29 | edit

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 |  # | 2023/08/11 15:00 | edit

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