かぎろひNOW
悠久の奈良大和路を一歩ずつ 風景、もの、人…との出会いを楽しみながら
僕が歩いた古代史への道

『僕が歩いた古代史への道』(森浩一著 角川ソフィア文庫 平成12年10月25日初版発行)
表紙がだいぶ傷んでいる。
先日、高野山麓から奈良へ戻る途中、橋本駅での電車待ちのときに、 「ゆかいな図書館」で、借りたもの。
誰がこの本を手放したのだろう、何人がこの本を読んだのだろう、傷みのひどい本を眺めながらまずそんなことを思った。
そう言えば、『されど我らが日々』(柴田翔著)は、古本屋で真新しい全集を見つけるところから始まったんだったなあ、そうそう宮崎駿の『耳をすませば』は、図書館が…。
古書はどこかドラマを秘めている。
ちらりとそんなこともかすめながら、電車の中でページをめくった。
すぐにひきこまれてしまった。
著名な考古学者のエッセイなのだけれども、なにか非常に情感豊かな短編小説集を読んだ気がして、読了後しばらく経っても、折に触れて思い出されて、しみじみとしたあたたかい気持ちになった。
たとえば、どんな箇所を紹介しようかなと、本を持ってきて、また読み始める。
…
えっ、気がついたら、また読み込んでいたみたい。
もうこんな時間!(明日中にやってしまわなければならない仕事があるのに…)
踏査の折り、出会った人に弁当を分けてもらった話、見知らぬ女性から譲り受けた石器は戦死した息子が集めたものだったという話、また息をひきとったばかりの母親のそばで翌日の説明会資料をまとめあげたK氏の話などは胸をうつ。
あるいは、終電車の中で見たひとこま。初めてお酒を飲んで酔いがまわった女子学生と4人の男子学生の話などは、映画の一シーンを見ているかのよう。
辛辣な言葉も出てくるが、いやそれゆえにか、著者の人間性がいきいきと浮かび上がってくる。
厳しくもあたたかいまなざしが感じられる。
すっかりファンになってしまったワタクシは、この先生の講演会も見逃すまいと思っている。
TB: -- CM: 2
27
| h o m e |