かぎろひNOW
悠久の奈良大和路を一歩ずつ 風景、もの、人…との出会いを楽しみながら
長弓寺

行きたい時に行きたい所へ行くのはなかなか叶わないので、「ついで散策」「ついで拝観」(お寺様・神社様あいすいません)を楽しみにしている。
先日、「山鶴」の蔵を訪ねたときは、富雄川をはさんで対岸の地にある「真弓山 長弓寺(ちょうきゅうじ)」へ足を伸ばしてみた。ほんとに久しぶり。
聖武天皇の発願で行基が開基したと伝えられる由緒あるお寺である。
山門

本堂は国宝。

棟木に、弘安2年(1279)の墨書銘が残る。
蒙古群が来襲したあの文永・弘安の役の時代だ。
翼を広げたような、檜皮葺の屋根が美しい。
蛙股(かえるまた)には彫刻がほどこされていて、細部にもこだわりの美しさが感じられる。


あまり声高には語られないが、このお寺には国宝の本堂のほかにも魅力はいっぱいある。
「まゆみの鐘」と呼ばれる梵鐘もそのひとつ。
誰でも志納でつくことができる(心をこめてついてください、とある)。
たまたま来られていた人が鐘をついた。
思わず黙祷。心のひだに、ひたひたとしみこんでくるような響きである。そうして、ずうっと余韻が長引く。いったいいつまで続くのと思われるほどの余韻なのだ。今まで聞いた鐘のなかで、これほどの余韻をもつものがあっただろうか。
余韻というものは、境内の静かさやその時の気分で変わるものなのかもしれないが、その後もしばらく私のうちから消えなかった。
心がささくれたときや落ち込んだときは(そんなんあるんかって言われそうだが、あるんですっ)、ここの鐘を聴きに行こう!
鐘の作者は、人間国宝の故香取正彦氏。
こぶりでほっそりとした姿。余韻は大きさではないのね。
「生滅々已 寂滅為楽」の文字。
真言涅槃文の一節らしいが、深すぎて、私には説明できませぬ。
お寺の方にお尋ねを。

つづく
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